あるハンターの手記
オリジナルソラトロボ(仮称)1話目 その1
「フロマージュちゃん、なんかいい仕事ないかい?」
シェパルド共和国 首都ファラオ―――
カウンターに片腕を乗せながら犬頭の男性がしっぽを少しクルクルさせながらカウンターの奥にいる紫色のワンピースに白いエプロンをした金髪の女性に声をかける。
フロマージュと呼ばれたその女性はその声を背に分厚いファイルに閉じられた書類を素早くめくっていく。
『QUEST』と書かれた看板が下がっているこの建物は石造りで、その周囲の建物もやはり石造りで、ハンターや親子といったあらゆる人たちがにぎやかしく石畳みを踏みしめていきかっている。
やがてフロマージュは男性のとこに戻ってきて、カウンターの上にファイルを広げた。
「それじゃあ…こんなお仕事はいかがですかぁ?列車の積み下ろしのお仕事ですぅ」
「それじゃあ、その仕事でいいよ」
そういうと男性はフロマージュの目の前に自分の写真が載った免許証を差し出した。
この免許証はライセンスを受けた”ハンター”にのみ交付されるものだ。この男性はハンターを生業としており、ここクエスト屋は依頼人(クライアント)とライセンスを持つハンターとの間で仕事の募集やマッチング、請負を仲介する場所だ。
フロマージュはその免許証を手にとるとなにやらメモをとってすぐに男性に手渡して返した。
「あんがとよ~フロマージュちゃ~ん」
「頑張ってくださいですぅ~」
フロマージュが手を振って男性を見送ると男性がカウンターの前から去っていったあと、順番を待っていたかのように別のイヌヒトの青年がこそっとやって来た。フロマージュが笑顔であいさつをする。
「ボンジュ~ル。」
「え、あ、ボ、ボンジュール…フロマージュさん…。」
青年はフロマージュに声をかけられるとなんだかしどろもどろしながらジャケットの胸ポケットから取りだしたハンターの免許証をフロマージュの目の前に差し出す。
その免許証には青年の顔写真と"Rot Missionar"という名前が載っていた。
生年月日からすると19歳のようだ。
「免許証はクエストを引き受けてから提示してもらっていいんですよぉ?ロートさん?」
「ああ、すみません…。また間違えてしまいました…」
ロートと呼ばれたそのイヌヒトの青年は慌てて免許証を引っ込めて上着の左胸ポケットにしまい込む。
前分けの紺色の短髪に、顔は亜麻色の毛皮に青みがかった灰色の毛が少し混じっており、赤いラインが入ったベージュのジャケット、紺色と黒色を基調としたズボンにひざ下の黒色のコンバットブーツを履いている。
そして、その胸には『0008/7』と刻まれたくすんだ銀色の金属製のプレートが首から下がっている。
右肩には刃物部分は手入れされているが古ぼけているマスケットが担がれていた。
また、クエスト屋の近くにはロートのものと思われる紺色と朱色を基調とした小柄な中型のロボが止められている。
「あの…今日1日でで終わらせることができそうなクエストとかはありますか?2、3件持ちたいのですが…」
「そうですねぇ…最近は単独でのクエストっていうより複数人、チームでのクエストは多いんですけどねぇ…。それにしても今日はよく頑張りますねぇ~。急にお金が必要になったんですかぁ?」
ロートはフロマージュの言葉を聞いてからしばらく間、何か理解してから考えて話し始める。
「ええっと、もうすぐ僕の定期券の効力が切れそうなのです。それなのでお金が必要なのです。」
外国人や留学生がしゃべるような少し堅苦しい文法とたどたどしいシェパルド語でしゃべる。
ロートの外見はいかにもシェパルド生まれのイヌヒトという感じなのだが、しゃべり方はまるで言葉を覚えたての留学生だ。
「そうなんですかぁ。そしたらこのクエストとこのクエストが…」
「うわぁあ…っ!!」
その時、港のほうから緊迫感がある声がしてきた。
ロートとフロマージュの二人が同時にそちらの方向を見ると小型のロボに乗った男達が宙に浮く小型の輸送船を取り囲んでいる。
そして船の中にいた船員らしき人達をロボの手でつかんでは船外に乱暴にほうりだしてゆく。
―――空賊団だ
その空賊団、白っぽい服を着た男達は最近になって登場した新興の空賊団である。
しかも一般の商人を襲うのみならず、別の空賊を襲って商人から奪ってきた盗品を横取りしていくというなんとも悪評高い空賊団だ。
船はあっという間に男達に乗っ取られてしまい、船の後方の甲板に乗っている空賊の男が得意げに港につないであった鎖を外してしまった。
「まぁ!大変ですぅ!」
フロマージュがそう声を上げた次の瞬間にはロートは自らのロボに乗り、石畳みを踏みしめて男達めがけて船のほうへ走り出していた。
しかし、男達はそんなロートを気にかける様子もなく、してやったりの顔で下品に笑っている。
ロートが走っている間にも船は岸から少しずつ遠ざかっていく。
ロボの足が力強く石畳みを蹴って、宙に飛んだ。
ブワッ
ロボの足はもう港の岸壁から離れていた。
ロートが搭乗するロボの体が強い上空の風を受けながら空に舞う。
上には澄んだ青空、直下には少し灰色がかった雲海が果てしなく広がる。
落下すれば高度と雲海の雷撃を食らうことになる。
そうなれば死は―――間違いない。
スローモーションでロートのロボが船の後ろ甲板に向けて徐々に落下していく。
その場にいた者は唖然とそんな光景を見ていた。
後ろ甲板にいる空賊の男達はロートのロボの影を頭上で受けることになる。
「なんだ…あのロボ…!!なんてジャンプ力なんだ…!!」
男がそう言い終わらないうちにロートのロボは後ろ甲板に着地をし、その右手に握られていた巨大な鉄パイプで目にもとまらぬ早さで男達が乗っていたロボを吹き飛ばし、男達をロボの操縦席からほうりださせる。
男達はその時に甲板にたたきつけられた衝撃で気を失ってしまった。
船はぐんぐん港から離れてゆく。
ロートはロボに乗ったままのびた男達をまたいでロボに乗ったまま後ろ甲板にある大きな扉を開けて乗っとられた船内へと入っていった。
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