あるハンターの手記
オリジナルソラトロボ(仮称)1話目 その2
ロボもギリギリくぐれる大きな入り口から船内に入ると厳重な鉄の扉が続く薄暗い廊下が伸びていた。
先を見るとさらに扉があるが、ロボではギリギリ通れるぐらいの大きさだ。
仕方ないのでロートはマスケットを肩にかついでロボから降り、この先にあると思われる空賊に占領された船のコックピットに進むことにした。
静かに2回ほど扉をくぐっていると、突然扉が向こう側から開いた。
そこには先ほどロボに乗って襲いかかってきた空賊と同じような白い服装をしたイヌヒトの男達が3人いた。
「うわっ!なんだ!?こいつ!?まだ船員が船内に残ってやがった!」
男達はすかさず手に持っていた短刀をロートの面前に突き出した。
しかし、ロートはあくまで防御の体勢でマスケットをかまえているだけだ。
「…今すぐこの船を止めてください。」
たどたどしくロートが口を開いた。
するとそれを聞いた男達はあっけにとられたように目を丸くする。
「こいつ…大の大人のくせに子どもみたいなしゃべり方…おかしくね?てか、ガイジじゃね!?こいつ!!」
一人の男が短刀でロートを指しながらそう言うと、男達は武器を下ろしてゲラゲラと笑い始めた。
ロートはその様子を茶色の瞳でじっとうらめしそうににらんで見つめている。
そして、男達の下品な笑い声が廊下中に響く中、ドスのきいた声でロートがつぶやく。
「黙れ」
それはシェパルド圏以外の言葉であった。およそ通常のイヌヒトはしゃべらない言語である。
男達はその言葉の意味は聞きとれていなかったが、ロートからただならぬ雰囲気は感じとったらしく、一瞬笑いが止まった。
そして、次の瞬間にはロートのマスケットの胴体部分が男達の頭に次々とあたり、男達はバタバタと床に倒れて、あたりは静かになった。
一瞬だけロートの顔に悔しそうな表情がよぎった。
でもすぐにそれを消してコックピットへとつながる扉に手をかけた。
ガチャッ
そこには操縦席に座って操縦桿をにぎる男の姿とその後ろにはなんだか偉そうな態度をした白いロングコートを着たヒョウの男が何やら指示を出している。
その男の服装からすると先ほどの男達は下っ端だったと見てとれる。
そのうち男がロートの存在に気がつく。
「さっきから外がやかましいと思ってたらお前がひっかきまわしてたんだな…」
うっとおしそうに男がそうつぶやきながら腰に差してあったサーベルをすらりと引き抜き、ロートを指した。
一方のロートは黙って男をにらんだままマスケットを構えた。
「クソなまいきなイヌヒトのガキめ!ここで始末してやる!」
そう言い終わらないうちに男のサーベルがロートのマスケットの胴体部分を打つ。
ロートはそれに驚きながらもサーベルの刃をマスケットの胴体で力いっぱい押し返す。
二人の靴底が床を擦れ、二人のあいだに間が空く。
「おれのスピードには勝てん!」
その空いた間もつかの間、男がサーベルを素早く連続でふるってロートとの間合いを詰め、猛攻を仕掛けてくる。
ところが、そんな高速の剣撃にもかかわらず、余裕というわけではないがロートはすべての剣撃を見極めてマスケットの胴体ではじいていく。
「クっ…ソがぁぁぁー!!」
マスケットの防御範囲からわずかに外れた隙の空間を突いて男がロートの脇腹に向かって素早くサーベルを入れる。
もう絶対にマスケットでの防御では間に合わない速さだ。
あまりの高速の剣撃にあっけにとられている暇さえもいないのか、ロートは焦った様子すら見せていない。
男が勝利を確信してにぃっと笑った瞬間、ロートの体がひねられて剣撃はいとも簡単にかわされた。
それも完全にロートが剣撃を見極めきっているかのようだった。
頭にきた男はやみくもにサーベルをふるっていくが、ロートは通常のイヌヒトが見せないようなしなやかな体の動きですべての剣撃をかわしてゆく。
「こいつ…!なんて身軽さだ…!イヌヒトのくせにネコヒトみてぇな動きをしやがる…!」
男が焦って攻撃が甘くなってくると今度はロートがとってかわって猛反撃に出る。
先ほどの男の剣撃の速さとほとんどかわらない速さでマスケットの剣先を男のサーベルにぶつけ続ける。
しかもその上、ネコヒトの男では出がたいイヌヒトの男の力強さでぶつけてくる。
男はロートからの剣撃を受け止めるのにせいいっぱいで次第に疲弊してくる。
その時、一瞬を突かれて男の手からサーベルがはじかれる。
当時に力いっぱいサーベルにぶつけられたロートのマスケットもロートの手から離れてゆく。
男のサーベルとロートのマスケットがスローモーションで宙を舞っている間、ロートの堅くにぎられた右拳がすかさず男のフサフサの毛が生えた左ほおを殴り飛ばす。
男の体は数メートル吹き飛んだとこで船の床にたたきつけられて、男はぴくりとも動かなくなった。
それと同時に男の近くの床にサーベルとマスケットが音をたてておちてきた。
ロートは倒れた男を見ながらふうと息をつくと床におちているマスケットをひろい上げて胴体部分をポンポンとたたいた。
そして、おびえた様子で操縦桿を握っていた空賊の男の目の前にビシッとひろいあげたマスケットの剣先を突き出した。
操縦席に座っていた男がびくびくしながら「ひぃっ」と恐怖の小声を上げる。
ロートの表情はなんだか穏やかなものであり、それは余裕から来る笑顔だろう。
「そのまま…継続して港に戻ってください。」
「本当に助かったよ。今回の荷物はお得意様からの依頼で一時は本当にどうなるかと思ったよ。君は命の恩人と言っても過言じゃない。本当にありがとう。」
ファラオの港に戻ると乗っとられた船の主であるゴールデンレトリーバーの中年の男性がうっすら涙をうかべながら何度も何度もロートにお礼を言ってくれた。
そんな二人を背に先ほど船を乗っとった空賊の男達が警察にとぼとぼと連行されていく。
「どういたしまして。僕は帰ります。」
「ああ、待ってくれ!助けてもらったからには君にはぜひお礼がしたい。ほんの些細な金額だが緊急クエストの謝礼として受けとってくれ」
そう言うと中年の男性はロートに800リグを手渡した。リグはこの世界の流通貨幣である。
「こんなに高額なお金…。いいのですか…?」
「いいんだ、いくら礼をしても感謝し尽くせない。ところで私の名前はサヴォアというんだ。君の名前はなんと言うんだい?どこらへんに住んでいるんだ?ぜひ教えて欲しい」
「僕の名前ですか?僕の名前はロート・ミスィオナーリと言います。ヴァイマラナ王国のピンシャーという町に住んでいます」
「ロート君か…。恩人の名前としてしっかり心に刻んでおくよ。これから機会があればぜひ君に仕事を頼みたい。その時はよろしく頼むよ、ロート君」
二人は互いに手袋を外してフサフサの毛皮で覆われた右手を前に差し出してガッチリと握手をした。
ロートは目を細めてにっこりと笑った。
「どういたしまして。ありがとうございます」
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